159-衆-法務委員会-8号 平成16年03月31日

○柳本委員長 泉房穂君。

○泉(房)委員 民主党の泉です。よろしくお願いいたします。
 私は、本日は、先ほどの山内議員に引き続きまして、犯罪被害者の支援の問題、そしてもう一点、無年金障害者の救済の問題、この二点につき、質問させていただきます。
 三十分という限られた時間でもございます。また、犯罪被害者につきましては、先ほどの山内議員、またこの後の松野議員も質問を予定しております。また司法ネットの審議の中でも十分な審議がなされると思いますので、きょうはポイントを絞りまして質問させていただきます。
 まず、その前提といたしまして、私自身の問題意識ですが、私は七年前に弁護士になりました。犯罪被害者という方と直接向き合ったのはそのときが初めてであります。弁護士になりまして初めての刑事事件は、いわゆる下着泥棒の事件でした。
 被害者のところにおわびに行きました。そのときに、本当に厳しい言葉を投げかけられました。抽象的に考えてみますと、下着一枚とったにすぎないことかもしれません。でも、その被害者の方は、犯人が捕まるまで、本当に恐ろしい思いをしてきたと。その御自宅にはビデオカメラまでわざわざ設置して、犯人を捕まえようと、随分そういった思いで過ごされたというお話も聞きました。
 その際、それは連続の下着泥棒だったもので、実際に裁判になったのは二件だけでした。でも、実際のところは十四件の事件を起こしたと当の被疑者が言ったものですから、十四件すべて、おわびに回りました。
 そういった中で私が感じたのは、いわゆる刑事事件の場合、どうしても、重大な部分に限られて、そこだけ起訴したりします。しかしながら、そういった刑事事件にならなくても被害者はいるわけでありまして、その被害者がやはり心が傷ついていたり、悩んでいたりする、そういうことをそのとき私は実際に感じたわけであります。
 その後も、刑事事件をする中で、児童虐待で、それは私自身の知り合いが加害者となった事件でありまして、実際上、連れ子の子供が亡くなるというむごい児童虐待の事件の弁護も担当しました。
 お通夜に行きまして、土下座をしました。本人は捕まっておりますので、本人に成りかわりまして、亡くなったお子さんの親御さん、おじいちゃん、おばあちゃんに土下座をしておわびをしましたが、とても許してもらえるような状況ではありません。そのときに、どうして加害者の側に私、弁護士がついていながら、遺族、被害者の側にはどなたもいないのかと、本当に心の痛む思いをしました。
 また、交通事故の事件の際によく弁護をします。執行猶予をとるために、示談金の提示をして、示談交渉をしたりします。私自身は、お金を払う側の立場ですから、できれば安い金額で済ませたいということになりますが、ただ、被害者の側からいえば、できる限り適正な価格の被害弁償を受けられてしかるべきであります。
 現実問題、刑事事件の場合、執行猶予になるか否かの時点では、加害者側はお金を払おうとします。しかしながら、一たん刑事事件が終わってしまった後、改めて民事事件になっても、もう既に刑務所に入っていたりしますと、なかなかお金を払おうとはいたしません。
 そういった意味でも、早い段階で、被害者の側にも、適正な被害弁償を受けるに値するような、ちゃんと支援の体制が要るのではないか、そういったことを常日ごろから感じている次第であります。
 そして、犯罪被害者につきまして思うのは、犯罪被害者と一口に言いましても、さまざまな被害者の特性に応じて、ニーズといいますか、必要としている支援は違うのではないかということであります。
 例えば障害者の場合、知的障害者、精神障害者、身体障害者。身体障害の場合であっても、視力障害、聴力障害などなど、本当にそれぞれごとに必要としている支援は違います。障害者というからといって、全員に車いすが要るわけではありません。
 それと同じように、犯罪被害者にもそれぞれ特性があるわけであります。重大事件の遺族になった場合、やはり刑事裁判の場で被告人に対して一言言いたいという気持ちはごもっともです。しかしながら、例えば性犯罪の被害者の場合、できれば顔も合わせたくない、心の傷に対してやはり支援を必要としているわけであります。先ほど申した交通事故の被害者の場合は、やはり適正な民事的な補償というものが大きな問題であります。また、児童虐待などの場合、実際、大事に至る前に、早い段階での被害者側からの相談システム、相談窓口の整備が必要であります。そういった特性に応じた犯罪被害者に対する支援システムが今急務である、私はそう思っております。
 そういった見地も含めまして、きょうは法務省と警察庁に対しまして質問させていただきます。
 まず、法務大臣につきましては、繰り返しになりますが、ポイントをかいつまみます。犯罪被害者支援の必要性は急務と感じますが、その必要性の認識、そして充実に向けての具体策、そしてまた司法ネットにおけるその位置づけにつきまして、改めて決意のほどをお伺いしたいと思います。

○野沢国務大臣 委員が大変御熱心にこの問題に取り組んでおられることに敬意を表するものでございます。
 犯罪の被害者やその遺族の方々の苦痛、悲嘆、怒り等を真摯に受けとめまして、その立場に配慮して、保護、支援を図ることは、刑事司法の重要な責務であり、また正義の実現という司法の目的に沿って、今一番必要なことであるという認識でございます。
 そこで、法務省におきましては、平成十二年五月に成立した、いわゆる犯罪被害者保護二法によりまして、まず証人の負担を軽減するための制度、二番目に公判廷において被害者が意見を陳述する制度、並びに、三つ目に被害回復に資する制度を新設するなどの法整備を行ったところでございます。
 検察当局におきましても、被害者の立場、心情に配慮しつつ、事件の適正な捜査処理に努めてきたところでありますが、被害者に対しまして、検察庁における事件の処理結果や刑事裁判の結果等を通知する被害者等通知制度を実施するほか、被害者支援員を配置し、被害者からの相談に応じてきておるところでございます。
 最近の犯罪被害者のための施策の充実を求める国民の声が高まりを見せているということを受けまして、現在、法務省内には研究会を設けまして、現行制度に加えて、さらにどのような形で被害者の保護、支援の充実を図ることができるかについて調査研究を進めているところでございます。
 この研究会の結果、あるいは検討の状況を踏まえて、被害者の方々の保護、支援に関する施策の充実に一層努めてまいる所存でございます。

○泉(房)委員 先ほど山内弁護士からの質問で、刑事事件に法務大臣はそれほど多く接しているわけではないというようなお答えかと思いますが、特に犯罪被害者の場合、幾ら人間に想像力があるといいましても、やはり限りがあります。直接被害者の生の声を聞くことによって感じ取る部分もあると思います。ここは質問通告しておりませんが、法務大臣、被害者の生の声を、この際、犯罪被害者支援に向けて取り組む重要な役割を担う大臣といたしまして、生の声を聞く機会を設けていくという御用意はあるか、お答え願います。

○野沢国務大臣 できるだけその機会をつくりまして実態を見聞し、あるいは直接お話を聞く機会をつくりたいと思っております。

○泉(房)委員 続きまして、先ほどの山内弁護士とも重複しないように質問しますが、重大犯罪の場合、質問といいますか、刑事手続の中で、やはり被害者の地位といいますか、権利というものをしっかり認めてほしいというニーズがあります。この点につきましては、いろいろ議論があることは私も承知しております。ただ、運用面の改善によりまして、ある意味、そういった被害者の思いをかなえるような運用は可能ではないのかというような思いを持っております。
 また、国選弁護人制度の導入につきましても、これもなかなか議論のあるところではあります。いわゆる刑訴法上の権利を前提にせずして、税金でもって国選という制度を設けていいのかという議論はあろうかと思います。
 しかしながら、この点につきましては、被疑者側に手厚く税金でもって国選弁護人をつけるにもかかわらず、被害者側に税金でもってつけてはならないというふうに国民は思わないと思います。国民の理解は、十分に、被害者側に対する支援システム、税金をもって支援していくということについての理解は得られると思います。また、論理的にも、必ずしも刑訴法上の権利というものを前提としなくても、被害者に対する国選弁護人制度の導入は可能だと私は考えます。
 また、あわせて、扶助の活用につきましても、今のところ扶助につきましては低所得者層二割に張りついております。しかしながら、犯罪の被害者が低所得者層であるかどうかというものは直接関係はありません。いわゆる所得層中級の方であっても、大きな事件に巻き込まれて被害に遭ったときに支援が必要なことは同じであります。
 そういった意味で、広く一本の要件ではなくて、要支援性と申しますか、本当に支援を必要とする方に対して扶助制度の活用を図っていくような工夫もなされてしかるべきだと思いますが、これらの点、あわせてお答えのほど、ポイントで結構ですから、お答えよろしくお願いいたします。

○樋渡政府参考人 委員のお考えのように、被害者あるいは犯罪被害者の御遺族の方々に対する支援というものは非常に必要なことだというふうに我々も認識しているところでございまして、先ほどもお答えいたしましたが、そのために法務省内に研究会を設けて、この現行制度以外にどのような方法で対処できるか、対応できるかということを真摯に検討しているところでございます。
 その中には、委員御指摘のような問題も含めながら、あらゆる角度から、学者の先生にも入っていただきながら検討しているところでございまして、その真摯な検討を待ちたいというふうに思っているところでございますが、現行制度の運用におきましても、検察官は、被害者等に必要な情報を提供しますとともに、十分な意思疎通を図り、刑事裁判手続にその心情や意図を適切に反映すべきことは当然でございます。
 平成十二年の法整備や運用上の措置により、検察庁における事件の処理結果等の通知、公判手続の優先傍聴、公判記録の閲覧及び謄写、被害に関する心情その他の意見の陳述などの整備が行われているところでございまして、被害者支援員も、これは本当に被害者の立場に立って、被害者に対していろいろなアドバイスはできるように努めているところでございますので、先生の、委員の御指摘の観点からも、被害者支援は大事に考えていきたいというふうに思っております。

○泉(房)委員 論点は多岐にわたりますが、引き続き法案審議の過程でも質問できると思いますので、きょうのところは次に進ませていただきます。
 犯給法の問題はこの後松野議員から質問があると思いますので、犯罪被害者支援につきましては、警察の方も随分早くから取り組んでおられると思います。その点で重要なのが民間支援団体との連携、また支援であります。
 傷ついた方につきまして、幾ら警察、検察が丁寧にといいましても、やはり限界はあろうかと思います。その点、実際上、みずからが被害者となられた方などが中心になってつくられることの多い、そういった民間支援団体が丁寧な心のケア、これは極めて重要だと思います。
 例えばアメリカなどの場合、伝え聞くところでは、民間団体の運営資金の八割程度が公費によって支援されていると聞きます。しかしながら、日本の場合、なかなか資金援助も進まず、それぞれ心ある方が一生懸命に活動しようと思っても、運営資金の難から、なかなかやりたいようなボランティア活動もできないという声もよく聞きます。
 この点、資金援助の点を中心にいたしまして、警察庁に対しまして、どのような形で民間支援団体の支援をしていくのか、お答えをお願いいたします。

○安藤政府参考人 警察といたしましては、被害者支援の充実のためには、民間被害者支援団体との連携が大変重要であると考えておりますし、そして、民間被害者支援団体が積極的に活動を推進するためには、やはり寄附金を募るなど財政基盤の確立が不可欠であると認識しておりまして、現在、各都道府県警察におきましても、補助金等が措置されるよう、鋭意努めているところであります。
 また、国レベルにおきましても、こうした民間被害者支援団体に所属するボランティア相談員に対しまして、都道府県警察が業務を委託するための経費につきましても、国として所要の補助措置を講じているところであるわけであります。
 また、資金援助ではございませんが、警察と民間被害者支援団体との連携強化、これが非常に大事だという観点に立ちまして、平成十三年の犯罪被害者等給付金支給法の改正によりまして、被害者やその遺族に対する支援を適切かつ確実に行える団体を都道府県公安委員会が犯罪被害者等早期援助団体として指定いたしまして、その当該団体に対しまして、警察から情報提供などを行う制度がこの機会に新たに設けられたところであります。
 警察におきましては、今後とも、民間被害者支援団体の活動に対し必要な支援を行うとともに、これら団体とも緊密な連携を維持しながら、真に被害者の視点に立ちました支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

○泉(房)委員 警察の方も、一定の努力といいますか、試みは、その点は評価いたしますが、犯罪被害者支援につきましてはまだまだ不十分です。一般的に、十年、二十年、諸外国から見ておくれているとも言われております。今回、司法ネットも含めまして、犯罪被害者支援につきましてさらなる充実化を図っているわけですので、警察庁におかれましても、さらなる充実に向けて取り組まれるよう、また後日質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 ちょうど時間が半分ほどになりましたので、もう一つのテーマの方に移らせていただきます。
 皆さんも御存じのとおり、新聞報道でも連日なされておりますが、無年金障害者の救済の問題についてであります。
 お手元の方に資料を配らせていただいております。一枚目が、これはいわゆる超党派の、百名を超す超党派議員によります議員連盟の緊急決議であります。その後、新聞記事を何枚かつづらせていただいておりますが、この法務委員会にて判決を取り上げるのは私が初めてだと思いますので、まずもって、法務大臣に対しまして、今回の判決についての受けとめをお伺いしたいと思います。
 この点、今、手元に、私、判決書の写しを持っております。この判決書を見ますと、被告の欄には国とありまして、その被告、国の下には両代表者、法務大臣、野沢大臣の名前が記されております。この被告はまさに野沢法務大臣なのでありまして、そのお立場から、今回の判決についての受けとめをまずお聞きしたいと思います。

○野沢国務大臣 大変重要な判決と考えております。
 我々、年金制度が、国民の皆様すべてがこの恩恵に浴するということが理想でございますので、この問題についての判決につきましては、個別具体的な課題についての評価は差し控えますけれども、いずれにしても、何らかの形でこれが解決することは大事なことと考えておりまして、今回のこの扱いにつきましては、今後の取り扱いの中で十分検討して措置をするつもりでございます。

○泉(房)委員 この問題は、法務大臣のみならず、厚生労働省を含めて、総合的な検討を要するということはもちろんわかります。
 ただ、この判決を見ますと、今回の判決の画期的なところは、立法不作為による違憲判決であります。立法不作為による違憲判決は、史上これまで二件しかありません。ハンセン病の件と、あとは慰安婦の問題。そして、今回が三件目であります。非常に珍しい判決であります。なぜ珍しいかといいますと、立法不作為、つまり国会が仕事をしてこなかった、サボっていたということを司法が示したということであります。しかも、その内容につきましては、憲法十四条、法のもとの平等違反という、平等原則違反であります。
 法務大臣といたしましては、まさに法のもとの平等につきまして極めて重大なる役割を果たしておられる立場でもあります。また、国会の不作為、国会の怠慢を指摘されたわけであります。この点、法務大臣としても思うところもあろうかと思いますので、その点、あわせてお答えをお願いいたします。

○野沢国務大臣 これは、やはり国会も、それから行政機関も含め、あらゆる関係機関が努力すべき課題と考えておりまして、今後の扱いにつきましては、関係機関と十分協議の上、適切な対応をしたいと考えております。

○泉(房)委員 控訴するか否かでありますが、控訴期限は四月七日と聞いております。極めていろいろな要素を含んだ判決の内容でありますので、慎重な検討を要すると思いますので、すぐに控訴するというようなことではなく、控訴期限ぎりぎりまで十分なる検討を要すると思いますが、その点、どのようにお考えなのか、お答えください。

○野沢国務大臣 関係機関と十分協議して判断いたします。

○泉(房)委員 この後、また厚生労働委員会の方でも私も質問する予定にしておりますけれども、この無年金障害の問題につきましては、今回の判決は学生無年金訴訟ということで学生さんの問題ではありますが、御存じのとおり、学生だけではありません。主婦の方、在日外国人の方、在外邦人の方の問題でもあります。また、極めて大きな問題となっております年金未加入そして年金滞納の方につきましても、同じく無年金障害の問題が生じております。
 この点につきまして、厚生労働省坂口大臣が、かつて坂口試案を提示いたしまして、すべての無年金障害者を救済すべきであるというような案を示されております。今回の新聞報道でも、救済策につきまして検討が加えられているというふうに伝え聞きますが、この点、厚生労働省、どのようなお立場なのか、お答えください。

○渡辺政府参考人 お答え申し上げます。
 無年金障害者の所得保障の問題につきましては、御承知のとおり、平成十四年十二月二十四日の閣議決定において「福祉的観点からの措置で対応することを含め、幅広い観点から検討する。」こういうようにされております。
 こうした閣議決定を背景に、私どもの省の中でも検討を進めておるところでございますが、与党の方におきましても、先般の年金改革法案の取りまとめに当たり、改めてと申しますか、与党としては初めてかもしれませんが、二月四日に、合意といたしまして「福祉的措置の在り方についてさらに検討し、必要な財源の在り方とともに速やかに結論を得ることとする。」こういうように方向づけをいただいておるところでございます。
 拠出制の年金制度をどう保っていくか、これは大変大きな課題でございますが、こうした年金制度や他の制度との整合性など、難しい問題が多々ございます。何らかの結論を得ていかなければならない。そのために、関係方面と、関係機関と十分協議していかなければならないというふうに考えて、検討を進めているところでございます。

○泉(房)委員 もちろん検討を要することはわかりますが、この問題は今に始まったことではありません。参議院、衆議院でも、附帯決議がもう数年も前からなされております。もう十分な検討期間があったと私は考えます。
 そこで、改めて質問させていただきますが、今回、論点としては幾つかありますが、まず三つの点を指摘します。
 まず一点は、今回の救済措置が、いわゆる福祉的な一般財源をもとにした形でなされるのか、そうではなく、年金という形の中でなされるのかという論点です。
 二点目は、これは年金でいけば障害基礎年金でいくと思いますが、そうでない場合であっても、漏れ伝わってくるような三万数千円ではなくて、やはり実効性のあるような金額が確保されるべきだという声は強く聞きます。この金額の問題。
 そして三点目、これが一番大きいと思いますが、対象者であります。学生のみではなく、厚生労働省も六類型に分けておられます。学生、主婦、在日外国人、在外邦人、そして未加入者、滞納者、この六類型のうち、少なくとも四類型につきましては速やかなる救済が必要であるという声が、原告団、弁護団など当事者団体から連日寄せられておりますが、この点、三点につきまして、どのような現時点での見解なのか、確認いたしたく、答弁をお願いいたします。

○渡辺政府参考人 お答えいたします。
 まだ検討の途上でございますので、若干の要素にとどまることをお許しいただければと思っておりますが、福祉でいくのか年金でいくのかということはよく言われるわけでございますが、そうした対象者の実情に照らして、その経緯ということを問わずに措置を講じるのか、それとも、これまでのもろもろの関係制度との兼ね合い、歴史的な経緯というものを踏まえて対応するのかということの考え方の整理の違いであるというふうに考えております。いずれをとりましてもなかなか困難な問題があり、どういう形での整理が可能か、なお検討を続けているところでございます。
 給付水準につきましては、どのようなことであれ、年金の保険料を納めてそして給付を得ておられる方々との関係、それから、これまでのさまざまな諸制度の中でとられてきた対応とのバランス、そういったものを十分考慮しなければいけないというふうにも考えられます。
 また、対象者の話につきましても、冒頭の御指摘の福祉か年金かということにも関連いたしますが、どういう経緯を持った方の現状であるのかということと、そのとるべき対策との兼ね合いということになると思いますので、それらを総合的に勘案して検討しているところでございます。

○泉(房)委員 現時点でお話しいただけることには限りがあるということはわかりますが、指摘しておきたいのは、今回の訴訟もそうですが、任意加入で未加入と申しますが、例えば、今回の訴訟の当事者は私とほとんど同じ年代でありまして、私自身は、一九八二年に大学に入りました。二十になったのは八四年であります。私自身も年金には加入しておりませんでした。当時の場合、学生で加入していた方は、厚労省の試算でも一、二%。もうほとんど、九八%、九九%が加入していなかったわけであります。そのときに、何らかの事情で事故にでも遭って後遺症が残った場合、全く障害基礎年金を受け取れない。
 そういった中で、実際上、親御さんがある程度の資力があれば、その中で生活保護も受けられず、親御さんとの中で暮らしておられるという実態があります。その数も決して少なくはありません。厚労省の試算で、六類型合計しますと十二万人以上の方が対象に当たるというふうに厚労省は既に試算しているわけであります。決して珍しい話でもなく、本当に私たち自身がもしかしたらそうであったかもしれないという問題であります。
 また、訴訟は学生のみでありますが、学生と同じように、主婦の問題もほぼ同様の状況であろうかと思います。また、在日外国人につきましては、任意ではなく、そもそも国籍の要件がありまして入れなかったというような事情があります。より救済の必要性は強かろうと私は思いますが、この点、それぞれ、学生、主婦との兼ね合い、在日外国人の救済につきましては、改めて答弁をお願いいたします。

○渡辺政府参考人 坂口試案として検討の素材をつくっていただきました、その中でも出てきている各グループについての御指摘でございますが、それぞれに背景、経緯が違うということ、今御指摘いただいたとおりでございます。難民条約との関連ということも抱えているグループもございます。
 さまざまな経緯の違いというものを、実現可能な、そして関連する諸制度とのバランスのとれる対応として、それぞれにどういう評価を与えていくのかということも検討課題の大きな部分であるというふうに考えておりますが、それをどう扱ったらいいのかという具体的な話を今申し上げられるような段階にはないというふうに考えております。

○泉(房)委員 民主党といたしましても、この問題は極めて重要な問題と認識しております。民主党としても、もちろんこの問題に積極的に取り組んでまいりますが、ゆっくりできるような状況ではございません。
 また、繰り返し申し上げますが、今回の訴訟、違憲判決があったからといって、学生のみに限り低廉な金額の手当てというような形で、いわばお茶を濁すといいますか、その場をしのぐというようなことで許されるような状況ではなかろうと思います。抜本的な救済が必要なわけでありますので、救済につきましての対象につきましては、六類型すべて、少なくとも、まずもって四類型、学生、主婦、在日外国人、在外邦人の四類型につきましては速やかなる救済、残りの二類型につきましては、さまざまな議論がございましょうが、救済に向けて取り組んでいくということを強く申し入れたいと思います。
 時間も迫っておりますので、最後に一点。
 資料の方で最後から三枚目にもつけさせていただいておりますが、今回のこの違憲判決を書いた裁判官がこのたび人事異動になって、行政部から違う部に異動したという記事であります。記事の中には左遷人事というような単語も見受けられます。私自身はそのようなことであるとは考えておりませんが、しかしながら、司法に対して重要なことは国民の信頼であります。行政訴訟につきましても、その裁判官がやはり適切な信頼の置ける判決を下すんだという国民の信頼があってこそ司法制度は成り立つわけであります。
 しかるに、このようなマスコミ報道がなされて、あたかも違憲判決を書いた裁判官が行政部でないところに異動したというような記事が書かれること自体が国民の信頼を失うようなことになりかねないかと私は危惧いたします。この点、最高裁の見解を問います。

○中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 御指摘の人事でありますけれども、これは東京地裁内部で、どの部で裁判を行うか、担当するかといういわゆる東京地裁内部の事務分配の問題でございまして、厳密な意味での人事異動の問題ではございません。
 また、裁判所におきましては、判決の内容に基づいて裁判官を異動させたり、あるいは配置がえしたりというようなことは、司法行政権が裁判の内容の当否を論じて人事異動の資料にするということにほかならないわけでございます。裁判官の独立というのは、これは外部からもあるいは内部からも、それは司法の生命線でございますから、そのようなことでは全くないということをまず御理解いただきたいと思います。
 なお、新聞記事がこういった形で書かれていましたことは、今委員が御指摘の観点から私どもの方もこれは残念なことであるというふうに思っておりますけれども、日ごろから裁判所について種々報道機関には理解をしていただけるよう説明をしてきているところでございますが、今後もそういった努力を通じて、そういった、少なくとも誤解を招くことのないようにしていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○泉(房)委員 時間が参りましたので、この点につきましては、無年金問題、厚生労働委員会も含めまして、また引き続き質問させていただきます。
 また、犯罪被害者の支援につきましては、極めて重要な問題でありますので、関係各所におきまして、この通常国会中、一歩二歩進むような質疑、答弁を期待いたしますので、よろしくお願いいたします。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。